週3日勤務、シフト制、扶養内で働きたいという方は、扶養制度について知っておかないと思わぬ損をしてしまうことがあります。税金と社会保険のルールは少し複雑ですが、年末に慌てることがないよう求人選びの時点から気をつけておきましょう。
年収に応じてさまざまな壁が存在するだけでなく、法律の見直しも頻繁に行われるため、常に最新情報をチェックしておくことが重要です。
そもそも扶養とは
収入の少ない家族に対して経済的な援助を行い、負担を減らすための制度です。家族をサポートする人を「扶養者」、サポートを受ける側を「被扶養者」といいます。扶養内の収入であれば、自分で所得税や健康保険料、年金などを負担する必要がありません。
そのため、親の扶養に入る、結婚している場合は配偶者(夫)の扶養に入るなどして税や社会保険の負担を少なくし、手取りの収入を増やしたいと考えている人が多いでしょう。
扶養と一口にいっても、所得税や住民税の控除、配偶者控除に関する「税法上の扶養」、健康保険や年金に関する「社会保険上の扶養」の2種類があります。それぞれに扶養内となる年収の基準があるため、「〇〇円の壁」の〇〇に入る金額も複数存在します。毎年、混乱してしまうという方もいるのではないでしょうか。
さらにややこしいことに、収入を計算する際に交通費といった手当を含めるのか、含めないのかといった点も税法上、社会保険上の扶養で異なります。
税法上の扶養では、非課税分の交通費や通勤手当を年収に含めませんが、社会保険上の扶養は通勤手当、家族手当、住宅手当も含んで計算をします。これは厚生年金保険法により「報酬」が事業主から労務の対償として受ける全てのものを指すためです。
なお、非課税分の交通費とは通勤にかかる交通費のうち、一定額までは非課税になるという制度です。公共交通機関(電車やバス)を利用して通勤している場合は、1ヶ月あたりの交通費が15万円以内なら非課税。マイカーや自転車を使用して通勤している場合は、通勤距離が片道2km未満は全額課税対象になりますが、2km以上になると距離に応じて非課税金額が増えていきます。
では、それぞれ金額ごとに税法上、社会保険上の扶養にどのような変化があるのか見ていきましょう。
103万円―所得税の納税が発生
税法上の扶養の壁です。年収103万円以内なら被扶養者は所得税を支払う義務がありません。親や配偶者の扶養内で働きたい場合は、年収が103万円を超えないようにしましょう。この計算には交通費や通勤手当を含みません。
結婚している場合、年収103万円以内なら配偶者控除が受けられます。適用されるためにはその年の12月31日の時点で次の4つの条件を全て満たす必要があります。
(1)民法の規定による配偶者(内縁関係の人は該当しない)
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
親族の扶養に入るためには、上記の(2)(3)(4)に加え、6親等内の血族および3親等内の姻族である必要があります。親は1親等のため、支障はありません。
(4)に関しては、例えば夫が行っている事業を妻が手伝い、妻に給与を支払っている場合、配偶者控除を受けられない可能性があることを意味しています。
夫が青色もしくは白色申告をしており、その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に妻が専ら従事し、青色事業専従者として給与をもらっている場合、年収が103万円以下でも配偶者控除を受けることはできません。
時給別に壁を超えるラインをシミュレーションしてみましょう。時給1,500円で週3日働く場合、5時間働くと5時間×週3日×4週間×12ヶ月で年収は108万円。103万円の扶養の壁を越えてしまいます。扶養内に留まりたいなら、4時間×週3日働くと年収は86.4万円です。
時給が上がると扶養内で働ける時間も減少していきます。時給1,800円で週3日勤務を希望するなら、4時間働くと103.6万円となり、103万円の壁を超えます。時給が2000円に上がった場合、103万円の壁を超えないためには3時間×週3日しか働くことができません。ただ、3時間という短時間での求人は多くないため注意が必要です。
なお、年収100万円前後で住民税を支払う必要が出てきます。お住まいの自治体の情報を確認してください。また、配偶者や親に家族手当が支給されている場合、被扶養者が103万円を超えると支給されなくなる企業があります。こちらも企業によって詳細な条件は異なるため、必ず確認するようにしてください。
106万円―条件によって勤務先で保険加入の義務が発生
社会保険上の扶養の壁です。下記の条件に全て当てはまる場合、扶養から外れ自身で保険料を払う必要があります。派遣の場合、派遣先企業の社会保険に入るのではなく、派遣会社の社会保険に入ります。
・勤務先の従業員が101人以上
・2ヶ月以上の雇用見込みがある
・1週間の所定労働時間20時間以上
・月額賃金が8万8,000円以上
・学生ではない
この計算には交通費、家族手当、住宅手当などの手当なども含めます。
106万円の壁を越えて自身で健康保険料や厚生年金を支払う場合、手取りが減少する可能性が高く、保険料負担を避けるために就業調整をするケースが多く見られます。そのため、2023年10月、国は「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。
年収106万円を超えた従業員に対し、社会保険適用促進手当を支給する、基本給の増額をするなどして手取り収入を減らさない取り組みを行った企業に支援金を支給することを決めました。2025年度末まで行われる見込みです。
そのため、年収が106万円を超えた場合でも勤務先によっては手取り収入が減少しない場合があります。詳細は勤務先に確認してください。
なお、2024年10月以降、勤務先の従業員の人数が51人以上に変更されるため、対象者が大きく増えます。扶養内に収めたい場合は2024年の求人選びは慎重に行いましょう。
130万円―勤務先での保険加入の義務が発生、扶養から外れる
社会保険上の壁です。年収130万円を超えると、勤務先の人数や雇用見込みといった条件に関係なく扶養控除が受けられなくなり、健康保険、厚生年金といった社会保険に加入して自らが保険料を負担する必要があります。この130万円には交通費、家族手当、住宅手当などの手当も含まれます。
130万円を超え、自身で社会保険料を負担すると手取り年収は減少しますが、メリットも存在します。例えば、病気やケガで働けない場合に給付される傷病手当金(業務による病気やケガは労災になるため対象外)や、出産手当金などが受け取れます。
また、勤め先の厚生年金に加入すれば、将来的に受け取れる年金額も増えます。一時的に負担は増えますが、長い目で見た場合メリットが大きいと言えるでしょう。
派遣社員の場合、社会保険加入の手続きは派遣会社が行うため、特別な手続きをする必要はありません。
130万円の壁を超える場合の年収をシミュレーションしてみましょう。時給1,500円の場合、6時間×週3日なら年収は129.6万円です。時給1,800円だと、5時間×週3日で年収129.6万円、時給2,000円だと4時間×週3日で年収115.2万円、5時間働くと144万円となり、130万円の壁を大きく超えてしまいます。ただ、この金額に交通費等が加算されるため、注意が必要です。
派遣の求人は交通費が時給に含まれているもの、別途支給されるものなど、求人によって交通費の取り扱いが異なります。社会保険上の壁を意識する場合は、交通費の取り扱いについても注意してください。
106万円の壁同様、社会保険料の負担を避けるため就業調整を行うことが社会問題になっており、「年収の壁・支援強化パッケージ」では130万円の壁にも対策が出されました。職場の人手不足に対応し収入が一時的に上がって130万円を超えたとしても、事業主がその旨を証明することで、130万円を超えても扶養内に留まれる制度が登場しました。自身が対象となるのかは、配偶者の健康保険組合などに相談してください。こちらも2025年度末まで行われる見込みです。
150万円―配偶者特別控除の満額(38万円)が受けられなくなる
親などの親族の扶養に入る場合、103万円を超えると税法上の扶養に入れませんが、夫・妻といった配偶者の扶養に入る場合は103万円を超えても配偶者特別控除を受けることができます。
夫の扶養に入る場合で考えてみましょう。妻の年収が103万円以内の場合、夫の合計所得金額が900万円以下なら配偶者控除の満額である38万円が控除されます。これは配偶者控除です。
妻の年収が103万円を超えると配偶者特別控除に切り替わりますが、150万円以下なら配偶者控除の満額である38万円が控除されます。妻の年収が増えると配偶者控除の金額は段階的に減少していきます。
なお、配偶者控除、配偶者特別控除いずれの場合も夫の合計所得金額が900万円を超えると段階的に控除額は減少。1,000万円を超えると妻の年収が103万円以内であっても配偶者控除を受けることができません。合計所得金額1,000万円とは、年収にすると1,120万円が目安です。
201万円―配偶者特別控除が受けられなくなる
税法上の壁であり、201万円を超える配偶者特別控除の適用がなくなります。201万円以降の扶養の壁は存在しません。
扶養内で働く、扶養を超えて働く、それぞれのメリットを比較
手取り年収が減るのは嫌だけど、将来の年金も増やしたいと考えるのは、当たり前のことです。どの年収で働くのが得になるのでしょうか。それぞれのメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。
・扶養内なら税や保険料の負担が減る
扶養内で働くメリットで、最も大きいものと言えるでしょう。扶養内で働くことで配偶者控除を受けることができるほか、所得税を負担する必要もないため、世帯全体でみると税負担を減らすことができます。
また、被扶養者は健康保険料を払うことなく3割負担で医療を受けることもできます。厚生年金に加入している配偶者に扶養されている場合は、自動的に国民年金の第3号被保険者になり、保険料を負担しなくても国民年金を受け取ることができます。なお、配偶者が自営業などで国民年金に加入している場合は、第3号被保険者ではなく第1号保険者になり、自身で国民年金を収める必要があります。
・年収の壁を意識しないと勤務先を自由に選べる
派遣の時給は比較的高く、103万円、106万円、130万円といった年収の壁を意識した場合、時給や勤務日数に制限があります。働く時間、日数が短い場合、育児や資格取得のための勉強、介護などのプライベートと両立はしやすいですが、スキルアップやキャリアアップが難しくなるでしょう。また、勤務日数や時給の条件が合わず、希望の職場で働けないこともあります。
年収の壁を意識せずにキャリアアップができる職場や業務内容を選んだほうが、順調にステップアップをしていくことができるでしょう。
・厚生年金に加入すると将来の年金額が増える
勤め先の厚生年金に加入した場合、第2号被保険者となり保険料を自身で支払います。負担金額は増えますが、一般的に厚生年金は国民年金よりも保障が手厚いため、将来もらえる年金の金額も増えるでしょう。老後を考えると、厚生年金への加入は大きなメリットになります。
・健康保険に加入すると傷病手当金を受け取れる
ケガや病気で働けない期間がある場合、自身が健康保険に加入していれば傷病手当金を受け取ることができます。配偶者の扶養に入っている場合、被扶養者がケガや病気で働けない期間があっても、傷病手当金は受け取れません。
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