派遣で働くならちゃんと知っておきたい「同一労働同一賃金」ってどんなルール?

「同一労働同一賃金」は、派遣社員を含む非正規雇用労働者の、不合理な待遇差をなくすための制度です。派遣社員として働くなら「同一労働同一賃金」の制度を理解し、派遣会社と派遣先が正しい対応をしているかを確認しましょう。

本記事では、派遣社員が押さえておきたい「同一労働同一賃金」のポイントを、わかりやすく解説します。

「同一労働同一賃金」とは?

「同一労働同一賃金」とは、同一企業・団体内における、雇用形態の待遇差を解消するための制度です。

仕事内容や業務の負担が同じなら、非正規労働者(派遣社員・契約社員・パートタイム)も、正社員と同等の給料や福利厚生を受けるべきだと定めています。

同一労働同一賃金は、2018年に成立した「働き方改革関連法」の一環として導入されました。

その後、2020年4月には「労働者派遣法」、2021年4月には「パートタイム・有期雇用労働法」が改正されています。

同一労働同一賃金が制定された背景には、労働者人口の減少や労働者ニーズの多様化などがあります。

正社員と非正規労働者の格差がなくなれば、どのような雇用形態であっても働きやすくなり、多様な働き方を選択することが可能です。

同一労働同一賃金の実現が、人材育成や離職率低下につながり、ひいては人材不足解消や生産性向上に貢献することが期待されています。

(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html#h2_3

「同一労働同一賃金」で対象となる待遇

同一労働同一賃金では、すべての待遇が対象です。

厚生労働省による「同一労働同一賃金のガイドライン案」には、基本給や各種手当といった賃金だけでなく、福利厚生なども該当すると明記されています。

「同一労働同一賃金」の対象となる待遇の例

  • 基本給
  • 賞与・退職金
  • 食事手当
  • 時間外手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 福利厚生
  • 教育訓練

同一労働同一賃金によって、派遣社員は、基本的に派遣先企業の正社員と同等の福利厚生が受けられるようになりました。

つまり、正社員が利用する食堂や更衣室などは、派遣社員も無条件で使用することが可能です。

正社員に教育研修がある場合、同じ業務に従事する派遣社員も受けることができます。

病気休職や慶弔休暇なども、派遣契約期間内であれば、正社員と同様に付与されます。

何をもって「同一労働」となるの?

同一労働同一賃金における待遇の公平化は、「同じ仕事をしている」ということが条件です。

スキルや労働日数によっては、「同一労働」に当てはまらないケースもあります。

◆「同一労働同一賃金」で問題とならない例

・正社員Aが「転勤あり」、派遣社員Bが「転勤なし」で、Aの基本給がBよりも高い。
・正社員Cには慶弔休暇を付与し、週2日出勤の派遣社員Dは振替を基本とし、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与する。

◆「同一労働同一賃金」で問題となる例

・派遣先企業Xでは、正社員に対して地域手当を支給しているが、派遣会社YがX社に派遣した派遣社員に対して地域手当を支給していない。
・食事手当の支給額が、派遣社員Fよりも正社員Eのほうが高い。

正社員と派遣社員間において、能力や労働条件が明らかに異なるなどの合理的な理由があれば、「不合理な待遇差」とは見なされないことを理解しておきましょう。

派遣における「同一労働同一賃金」とは?

2020年4月に「改正労働者派遣法」が施行され、派遣会社には「同一労働同一賃金」の実現に向けた義務が設けられました。

すべての派遣会社は、以下3つをすべて満たしている必要があります。

「派遣先均等・均衡方式」もしくは「労使協定方式」の整備

派遣会社は不合理な待遇差をなくすために、待遇決定方式を整備し、派遣社員の公正な待遇を確保する義務があります。

待遇決定方式とは、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを指します。

①派遣先均等・均衡方式

「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先で選定された「比較対象労働者」と、不合理な差が生じないように待遇を決定する方式です。

基本給・賞与・手当・福利厚生・教育訓練・安全管理など、すべての待遇が対象となります。「比較対象労働者」と派遣社員の業務内容が異なる場合は、待遇ごとに検討します。

②労使協定方式

「労使協定方式」とは、派遣会社と労働組合(または過半数代表者)が締結した労使協定に基づいて、派遣社員の待遇を決定する方式です。賃金は、同種業務・同一地域の一般労働者の平均賃金と同等以上とします。

ただし、賃金以外の待遇のうち、派遣先企業が実施する待遇は、「労使協定方式」の対象外です。この場合、派遣先企業の正社員と均等・均衡を図る必要があります。

「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の併用は可能です。

職種や有期・無期によって、待遇決定方式を変えることが認められています。

ただし、派遣先ごと・派遣社員ごとに変更することはできません。

令和4年度においては、「派遣先均等・均衡方式」が5.2%、「労使協定方式」が88.6%、併用が6.2%となっており、多くの派遣会社では「労使協定方式」が採用されています。

(厚生労働省「労働者派遣事業報告書に添付される労使協定書の賃金等の 記載状況について(一部事業所の集計結果(令和4年度)) 」/https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001027367.pdf

派遣社員の待遇に関する説明義務の強化

派遣会社は、「雇用時」「派遣時」「派遣社員の求めがあった場合」の3つの状況で、派遣社員に対して待遇に関する説明を行う義務があります。

それぞれの状況で、説明すべき事項も細かく定められています。

①雇用時に明示・説明すべきこと

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 労使協定の対象となる派遣社員か(対象の場合は有効期間)
  • 派遣社員から受けた苦情の対応方法
  • 労働基準法第15条に基づく労働条件

 上記に加えて、待遇決定方式に応じて、以下の説明が必要です。

  • 派遣先の正社員との間で不合理な待遇差を設けないこと
  • 労使協定に基づき待遇が決定されること
  • 賃金の決定に当たって考慮した内容(職務内容、能力、経験など)

②派遣時に明示・説明すべきこと

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 労使協定の対象となる派遣社員か(対象の場合は有効期間)
  • 賃金の決定に関する内容
  • 休暇に関すること
  • 労働者派遣法第34条1項に基づく就業条件の明示

③派遣社員の求めに応じて説明すべきこと

派遣社員から待遇に関する質問を受けた場合は、待遇決定方式に応じて、次の説明を行います。なお、派遣社員が説明を求めたことを理由に、不利益な扱いをすることはできません。

  派遣先均等・均衡方式「比較対象労働者」との相違やその理由、待遇の具体的な内容や実施基準待遇差に関する合理的な理由
  労使協定方式決定した賃金が要件を満たした労使協定に基づいたもので、公正な評価であること賃金を除く待遇は、派遣先の正社員との不合理な相違がないこと

派遣社員への説明は、文書や書面を交付し、口頭にて行うのが基本です。

派遣社員が希望した場合は、FAXやメールなどでも送付することが求められています。

裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

裁判外紛争解決手続(ADR)とは、裁判をせずに、第三者を交えて争いごとの円満解決を図る手法のことです。

ADRにはいくつかの種類があり、このうち「行政ADR」は、行政機関が行うADRを指します。

派遣社員と派遣会社(派遣先)との間でトラブルが生じた場合は、都道府県労働局による解決の援助や、紛争調整委員会による調停を求めることができます。

行政ADRのメリット

  • 無料で利用できる
  • 調停などの内容は非公開なのでプライバシーが守れる
  • 手続きが簡単・迅速

同一労働同一賃金の施行に伴い、均衡待遇や待遇差に関する説明についても、行政ADRの対象となりました。

「派遣会社が待遇や賃金についてきちんと説明してくれない」という場合には、行政ADRを利用するという選択も可能です。

「同一労働同一賃金」による派遣社員のメリット

同一労働同一賃金は、派遣社員の権利を守り、能力や意欲を正しく評価するためのものです。

同一労働同一賃金によって、派遣社員に具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきます。

昇給や昇進が期待できる

同一労働同一賃金によって、派遣社員の時給アップが期待できます。

基本給以外の部分でも、資格手当や食事手当といった各種手当について見直され、派遣社員の時給がアップする可能性もあるでしょう。

従来の派遣社員は、正社員に比べて「給与が低い」「賞与がない」など賃金面で不利なケースもありました。

しかし同一労働同一賃金の原則に従うと、同じ勤務条件や業務内容であれば、派遣社員にも正社員と同じ賃金が支給されます。

また、同一労働同一賃金ではスキルや経験を正当に評価する必要があるため、派遣社員でも昇給や昇進といったステップアップが望めます。

将来の目標を明確に持てるようになり、モチベーションの向上・維持にも役立つでしょう。

待遇に納得して働ける

派遣会社には、派遣社員に対して、待遇の決定や待遇差に関する適切な説明を行う義務があります。

待遇に気になる点がある場合は、納得できるまで派遣会社に確認することが可能です。

同一労働同一賃金では、「派遣社員だから」という不当な理由で待遇に差をつけることを禁止しています。

派遣先企業でも待遇の公平化が進み、派遣社員はよりよい職場環境で働けるようになるでしょう。

もし、派遣会社や派遣先が納得できる説明をしてくれない場合は、行政ADRを利用するという手段もあります。

同一労働同一賃金によって、派遣社員が自分の権利を主張しやすくなったと言えるでしょう。

スキルアップ・キャリアアップがめざせる

同一労働同一賃金により、業務に必要な教育訓練であれば、派遣先の正社員と同じものを受けることができます。

これにより、派遣社員でも、正社員のレベルと同じ知識やスキルを身につけることが可能です。

スキルが身につけば、より専門的な仕事や、正社員への転職にもチャレンジできるでしょう。

「派遣社員」という枠組みにとらわれず、キャリアアップにつなげられるのも、同一労働同一賃金のメリットです。

「同一労働同一賃金」が守られなかったらどうなる?

現在は、同一労働同一賃金を守らなかったことによる企業への罰則はありません。

しかし、企業には労働者に対する同一労働同一賃金の説明義務があります。

派遣社員が待遇差を感じて質問を行った場合、派遣会社と派遣先企業は、明確な理由を提示して説明しなくてはなりません。

もし、派遣会社や事業主に質問しても説明を得られない場合には、国の機関(都道府県労働局)に相談することが推奨されています。

過去には、非正規労働者が賞与や手当の不支給を訴えて、最高裁が待遇差を認めた事件も少なくありません。

「正社員と同じ更衣室が使えない」「正社員には夏季休暇があるのに派遣社員にはない」など、実際に働いて「おかしいな」と感じることがあれば、必ず派遣担当者に相談しましょう。

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「同一労働同一賃金」は、正規労働者と非正規労働者の待遇差をなくすための制度です。

派遣社員・契約社員・パートタイムでも、正社員と同じ労働をしている場合には、同等の給与や福利厚生を受けることができます。

派遣会社は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のどちらかを選択して、派遣社員の公平な待遇を整備することが義務づけられています。

また、同一労働同一賃金には説明義務があり、派遣社員が質問をした場合、派遣会社は明確な理由を提示する必要があります。

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