正社員と派遣社員は雇用契約が異なるので、正社員がやるべきことでも、派遣社員なら正当な理由をもって断れるケースがあります。正社員の業務を負担に感じる人は、派遣社員を1つの選択肢とすれば、自分に合った働き方に出会えるかもしれません。
今回は、「派遣社員がしなくてもいいこと」を紹介しながら、正社員との違いや、派遣社員のメリットについて解説します。
派遣社員が「しなくていいこと」リスト
派遣先企業は、派遣社員に対して指揮命令権を持ちますが、どのような業務でも指示できるわけではありません。
まず、派遣禁止業務として、「港湾運送業務」「建設業務」「警備業務」「病院・診療所などにおける医療関連業務」「弁護士・社会保険労務士などの士業」の5つが指定されています。これらの業務は、高い専門性と安全性が必要なため、派遣社員が行うことはできません。
(出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=360AC0000000088
(出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=361CO0000000095_20211101_503CO0000000162)
また、派遣先企業から何かを頼まれた場合、内容によっては断ることもできます。派遣社員がしなくてもいい業務には何があるのか、詳しく見ていきましょう。
契約書にない業務
派遣社員が派遣される際には、「労働者派遣法」に則って、派遣先企業と派遣会社が労働者派遣契約を締結します。労働者派遣契約には、派遣料金や業務内容などが細かく記されており、この契約書にない業務を指示することは契約違反です。
たとえば、契約書に「データ入力」とあるのに、「オペレーター」の仕事を頼まれた場合、派遣社員には断る権利があります。決まった業務だけをこなせばよいことは、派遣社員のメリットの1つです。
正社員には明確な業務範囲は決まっておらず、本人の希望や会社の意思次第で、さまざまな仕事が任されます。本当はしたくない仕事でも、引き受けざるを得ないケースは少なくありません。しかし、派遣社員なら契約外の業務をする必要はないので、毎日安心して仕事に取り組めますね。
出張
契約書に出張についての記載がない場合、派遣社員に出張をさせることは契約違反です。もし出張の可能性がある場合は、契約書に出張期間や出張先の事業所名などを明記する必要があります。
たとえ契約書で出張の可能性が示されている場合も、契約書にない場所への出張は契約違反です。また、出張手当・交通費精算・事故の補償といった条件も、事前に派遣先企業と取り決めておく必要があるでしょう。
派遣先企業から出張を頼まれた場合は、契約書を確認した上で「出張を断る」、もしくは「受け入れて契約内容を変更し、出張をする」のどちらかを選択することができます。正社員は急な出張を頼まれるケースも度々ありますが、派遣社員なら一方的に出張を言い渡されることはありません。
サービス残業
サービス残業は労働基準法違反なので、派遣社員に限らず、すべての労働者に断る権利があります。とはいえ、実際にはさまざまな事情により、サービス残業を行う人も多いでしょう。
派遣社員の場合、契約書に時間外労働についての記載がないのであれば、残業をする必要はありません。契約書に「時間外労働あり」と示されている場合には、「1日1時間」「1か月20時間」など、定められたルールに従って残業を行えばOKです。
派遣社員が残業をする際も、必ず残業代が支給されます。サービス残業を強いられた場合は、派遣会社に必ず相談しましょう。
なお、派遣社員は、派遣会社と締結した36協定に従って残業を行います。36協定とは、労働基準法36条に基づき、時間外労働や休日労働に関するルールを定めたものです。派遣社員として働く場合は、派遣会社と締結する36協定の内容についても確認しておきましょう。
(出典:厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のためにhttps://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000868397.pdf))
飲み会・接待
就業後の行動に関しては契約書に記されていないので、派遣社員が飲み会に参加する必要はありません。取引先との会食や接待、送迎会の幹事なども断ることができます。
正社員であれば、上司や同僚からプレッシャーを受けて、飲み会に参加せざるを得ない人も多いでしょう。企業によっては、飲み会への出席が人事評価に関わる可能性も否めません。
しかし、派遣社員はずっと同じ会社で働くわけではないので、飲み会に参加しなくても罪悪感も感じにくいというメリットがあります。派遣先企業の飲み会を断っても、出世や昇給に影響することもないでしょう。
部署異動
派遣の契約書には、就業場所や所属部署などが書かれており、定められた部署以外で従事することは契約違反とみなされます。他支店への応援なども、派遣社員が行う必要はありません。
ただし、次の2つの条件をすべて満たした場合は、派遣社員でも部署異動が認められます。
・派遣社員と派遣先企業の双方が合意していること・契約期間が満了していること |
つまり、契約更新時に、派遣社員と派遣先企業が合意している場合に限って、はじめて派遣社員の部署異動が可能となります。正社員であれば、会社都合の部署異動が行われるケースも多々ありますが、派遣社員なら同じ部署で安心して働くことができますね。
二重派遣
「二重派遣」とは、派遣先企業が派遣社員を別の企業に派遣することです。二重派遣は職業安定法で固く禁じられており、発覚した場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が課せられます。
二重派遣になると、雇用契約が守られにくく、責任の所在が曖昧になるといった問題が起こりえます。派遣先企業から、子会社など別の企業で働くことを依頼された場合は、必ず断った上で派遣会社に相談してください。
(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000141)
偽装請負
「偽装請負」とは、形式的には請負契約(委託契約)ではあるものの、実態は労働者派遣になっている状態のことです。
請負は「完成した仕事に対して報酬をもらう」契約であり、発注者と受注者の間に指揮命令関係は発生しません。しかし、請負と言いながら、発注者BがA社の派遣社員に対して細かく指示を出しているといった例は、偽装請負とみなされます。偽装請負にはさまざまなパターンがあり、実態を見抜くことは難しいケースもあるので注意が必要です。
偽装請負は、二重派遣の抜け道として意図的に行われることもあれば、いつの間にか偽装請負の形となっている可能性もあります。二重派遣と同様、派遣社員の安全や福利厚生が守られにくく、中間搾取が怒りやすいといった問題があるので、不安を感じた際には派遣会社に相談しましょう。
派遣社員として働くなら、派遣会社選びも重要
派遣社員には、「契約書にない業務」「部署異動」「二重派遣」などを断る権利があります。安全な環境で働くためには、信頼できる派遣会社に登録することも大切です。なるべく求人数が豊富で、研修やサポート体制が整っている大手の派遣会社を選びましょう。
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